儲けたければ「一業」に絞る。(佐藤一斎『言志四録』言志録219)

コラム

「一物を多くすればここに一事を多くし、一事を多くすればここに一塁(いちるい)を多くす。」

これは佐藤一斎『言志四録』の言志録第二一九条に書かれた言葉である。

現代語訳にすると以下の通り。

「物が一つ増えると、やることが一つ増え、やることが一つ増えると、わずらわしいことが一つ増える。」

 

例えば、便利だからといって、新たに家電製品を買い足したとする。その家電製品の使い方を覚えなければならないし、清掃するなど定期的にしなければならない煩わしさが増えるだろう。

だからこそ、佐藤一斎は安易に物を増やしたりするなと説く。

これは、商売でも同様のことが言える。扱う商品を一つ増やせば、その商品用のセールストークを用意しなければならないし、パンフレットやチラシ、ウェブサイトなどもそれ用に用意しなければならなくなる。

また、人を一人増やせば、便利だと思う反面、教育したり、面倒を見たりするなどの煩わしさが増えたりする。

何かを「一つ」増やすということは、思いの外、大変だということを覚えておいたほうがいいだろう。

 

私は常々、商売を軌道に乗せたければ、得意な「一業に絞りましょう」と言っている。一業に絞れば、その道では誰よりも知識が増えるし、上手に仕事をさばけるようになる。「その道のプロ」として口コミや紹介も起きやすくなるだろう。

特に独立起業時などは資金などのリソースは限られているのだから、あれもこれも手を出している余裕はない。だからこそ、思い切って一業に絞り込み、何かで強力な「突破点」を作る必要がある。

 

例えば、「一業」に絞ってうまくいった友人の事例を一つあげよう。

私の友人の社長は20代で独立起業した時は、様々な商品やサービスを扱っていた。商品が多ければ多いほど、その分、足し算で売上が増えると考えていたのだ。

しかしながら、商品が増えれば増えるほど、管理も大変になり、従業員に商品の説明をする手間が増えることに気がついた。社員を怒鳴りつけたりするなど、忙しい毎日を送っていた。

「このままではいけない」と気づき、思い切って商品を一つに絞ったのだ。メイン商品以外は全て捨てた。

 

結果はどうなったか?

そのメイン商品に関する知識は増え、どこにも負けない専門家になった。「あそこに頼めば大丈夫だ」という口コミも起き始めた。それに伴って売上も増えていった。

一つ象徴的だったことは、ライバル業者が「撤退」することになった時、その会社の顧客のほとんどが流れてきたのだ。

これは一業に絞り込むことで「名が立った」ことが要因といえよう。

 

このように、商売を軌道に乗せたければ、何か得意な「一業」に絞るといい。特に独立起業時や小商いの場合は資本などあらゆるリソースが足りない。あれもこれも手を出す余裕はないはずだ。そういう時ほど佐藤一斎のこの句を思い出してみてほしい。

記事執筆者
作野裕樹

(株)創伝社、代表取締役。1978年、愛知県生まれ。2001年にITビジネスで独立起業、2003年に法人設立。自社ブランドサービスを開発、運営。同経営は『経済界』『実業界』などに取材され掲載。書籍『学校では教えてくれない起業の授業(アスカ出版)』などを出版。
現在、自身の起業、経営経験と東洋思想の知見を活かした経営コンサルティング事業も展開。起業家や経営者のための「教養」を学ぶ場「創伝塾」を2010年から主宰中。
趣味は古武術(古流柔術)、ピアノ演奏など。

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コラム執筆者:代表取締役 作野裕樹
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